Mid-term Strategy and Target
中期経営方針
はじめに
三桜工業は、2021年度に策定した「2030年度に向けた『中期経営方針』」につきまして、今般その内容を見直し改訂いたしました。
私たち三桜工業の現業に関わる自動車の世界生産台数は、2030年に年間約1億台を展望するなど、引き続き成長が見込まれる市場です。インド・中南米・アジアがその成長を牽引していきます。
このような状況のもと、事実上寡占に近い状況で新規参入者も少ない自動車配管市場において、三桜工業は重要保安部品を参入障壁に世界有数のシェアを誇っています。また現状、ハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)など内燃機関も搭載する電動車が見直される中、三桜工業独自の戦略「サンオー・ラストマン・スタンディング戦略」でグローバルNo.1シェアを目指します。
自動車産業においては、一度受注した製品に関しては、車体やエンジンのモデルライフの期間中は継続して売り上げが見込めるというメリットがあります。継続して500兆円以上の規模が見込まれるグローバル自動車市場において、しっかりと優位性を維持し、現行の自動車部品事業をキャッシュカウ化(安定した利益をあげることができる事業化)していくことが、2030年を見据えた中期経営方針の主軸となります。
近年は各国において、自動車の動力源のニーズが多様化しています。ガソリンエンジン車やHEVなど従来の内燃機関搭載車に加え、モーター駆動のバッテリーEV(BEV)やバイオ燃料車、合成燃料などの石油代替燃料を用いた車も開発されております。
世界各国の政策や消費者の嗜好が異なる以上、自動車の動力源の多様化も今後10年は継続するであろうと当社は予測しております。今後起こり得るあらゆる事態に備えておくために、従来のブレーキや燃料の配管はもちろん、BEVやPHEV向けのサーマル・ソリューション製品にも積極的に投資し、シェアを拡大していく計画です。
自動車市場においてますますシェアを高め、現業のキャッシュカウ化を進めていくのと並行して、自動車以外の市場におけるサーマル・ソリューション事業やその他新規事業の拡大も、中期経営方針の重要な軸の一つです。
具体的には、データセンター用水冷配管や、インドをはじめとしたグローバルサウス市場における冷蔵庫などの家電用水冷配管、また生産設備の外販事業など、三桜工業が自動車部品事業で培った技術を新たな市場へ転用する形で、新事業を創出してまいります。
先行き不透明な事業環境下ではありますが、様々なバックグラウンドを持ち、幅広い年齢、性別、国籍で構成されるダイバーシティに富んだ経営陣の下、今後も三桜工業の持続的成長を実現してまいります。
Section 1
内外環境分析
内外環境分析(3C分析)と戦略の大要
インド・中南米・アジアを中心に、BEVにも需要が見込まれるブレーキ向け製品を主としてチューブ生産能力の増強、ならびに自働化/システム化に対する投資を進め、QCD競争力を強化していきます。また、米国Big3などとの取引拡大および新事業創出を加速させます。
Customer
自動車生産市場の動向
- 自動車の世界生産台数は継続して増加傾向(2030年に約1億台)
- 地域別伸び率順は ①インド ②中南米 ③中国 ④アジア
- ただし、中国は日系自動車メーカーが撤退 または 生産能力削減が顕在化
- 米国は労務費を中心に生産コストが高止まり
- 「BEVからHEV and/or PHEVへの見直し」機運の高まり
- アジアのうち、タイのBEV販売台数の急伸は要注視
Competitor
自動車配管の競合環境
- グローバルの競合他社はBEV製品の受注に注力
- 財務状況が悪化、一部ではリストラ中
- 国内競合他社との競合環境は限定的
- 新規参入もグローバルで僅少
- 中国では地場企業を中心に独自経済圏を確立
Company
自社の課題
- 自働化/省人化対応(Quality & Cost)
- チューブ生産能力の増強(Delivery)
- システム基盤の整備(Data-driven経営の推進)
- 米Big3(GM、Ford、Stellantis)との取引拡大は余地あり
- 新事業(既存事業以外の事業)加速化の必要性
- 受託製造業特有の “受動的なマインド”
- サステナビリティ経営への対応
自動車の世界生産台数予想(パワートレイン別)
BEVは市場台数が伸びており拡大基調が見通されています。一方でHEVやPHEVを含む内燃機関搭載車においては、市場台数は次第に減少基調が予測されますが、近年では内燃機関搭載車への見直し機運も高まっています。当社は、こうした不透明な市場ニーズの動向にも応えられる製品群の構築を目指します。
Section 2
中期経営方針
三桜工業固有のケイパビリティ
グローバル三桜グループは、商売の心得を大切にし、製造業には珍しいマーケットインの発想や徹底した顧客志向、多様性を重視するオープンイノベーションの価値観を持つ、ユニークな企業集団です。
商売の心得:
マーケットインの発想
良好な関係構築力:
オープンイノベーション
独立系企業:
ニーズある顧客への対応
徹底した顧客志向:
満足の行き届くQCD
中期経営方針で達成したいこと:
レジリエントなマルチポートフォリオの構築
中期経営方針で達成したいことは、①自動車部品事業⇒新事業 ②内燃⇒非内燃 という2つのトランスフォーメーションを通じたレジリエントなマルチポートフォリオの構築です。三桜工業は、2030年以降もサステナブルに成長し続ける会社になることを目指します。
2030年度定量目標
連結売上
2,000
億円
ROE
15
%以上
中期経営方針で主に注力する事業領域と今後の事業構想
中期経営方針では、①自動車部品事業⇒新事業 ②内燃⇒非内燃 という2つのトランスフォーメーションに注力します。新事業については、将来的にはシステム化やソリューションビジネス化を構想しています。
2030年度までのロードマップ(イメージ)
2023年度まではコロナ対応・事業基盤の安定化に注力しました。2024年度~2028年度は積極的に投資を行い将来への種蒔き・仕込みを徹底し、2029年度以降に投資の回収・収穫期に移行します。
三桜のキャッシュ・アロケーション方針
既存事業の早期のキャッシュカウ化による営業キャッシュフローの拡大によって新規投資予算枠を拡充し、「生産性向上」「成長投資」「株主還元」の3つのテーマへ資金を重点配分します。
生産性向上
- 自働化・効率化への投資
- IT・システム投資
- 人財投資
- ESG投資
成長投資
- 新事業の探索
- M&A
株主還元
- 安定配当の維持
- 自己株買いも視野に
Section 3
事業別の主な戦略
A. 自動車部品事業
2030年度までに自動車配管市場でグローバルシェアNo1を狙う
グローバル自動車配管市場で唯一の“専業”サプライヤーとして既存市場に踏み止まり続けることで、取引優位性を獲得する「サンオー・ラストマン・スタンディング戦略」で、グローバルシェアNo.1を狙います。
自動車配管市場のグローバルシェア(2023年度)と三桜が目指すグローバルポジション(2030年度)
注:自動車配管市場のグローバルシェアは当社試算
【戦略(1/2)】高い市場占有率とスイッチングコストを活かし、利益率を改善
高い市場占有率と、容易には代替の効かない重要保安部品 (*1) を客先生産 (*2) にて供給する高いスイッチングコストの存在を活かして、利益率の改善を図ります。
*1 不具合によって保安基準に適合しなくなる部品を保安部品と呼び、その中でも自動車の基本性能である「走る」、「曲がる」、「止まる」に関わる装置および火災など重大な事故に至る可能性のある装置を構成する部品のことを重要保安部品という。法令等で定められたものではなく、自動車の品質管理上で用いられている呼称。
*2 自動車メーカーの工場内に当社の生産ラインを設置して製品を供給するインサイト、自動車メーカーの工場に自社工場を隣接させて製品を供給するオンサイトを含む。
【戦略(2/2)】グローバル客先生産体制における現地生産機能・生産性の向上
成長ポテンシャルが見込まれるインドを含むアジア地域の生産能力の増強、米国市場への供給を見据えた中米地域を起点とする生産性向上、そしてマザー工場としての日本を中心に投資を進めていきます。
アジアでの主な施策
- 車輌配管製品の生産能力の増強(タイ・インド)
- パワートレイン製品の生産機能を集約(日本生産→タイ生産)
- 家電事業(冷蔵庫用水冷)の強化(インド)
日本での主な施策
- システム基盤の高度化(原価・生産管理、調達DBなど)
- チューブの生産性向上
- 新事業創出を強化
北南米での主な施策
- 米国拠点の生産性向上(メキシコ拠点の生産能力の増強)
- 米国Big3およびメガTier1サプライヤーとの取引に注力
サーマル自動車部品の“Tier1.5戦略”
サーマル自動車部品については、自動車メーカーへの直納のみならず、CASE (*) 機能を担ってメガサプライヤー化するシステム・モジュールサプライヤーへの供給も狙った“Tier1.5戦略”を掲げます。
*自動車業界の変革の象徴となる4つの領域の頭文字をとり作られた造語であり、業界の潮流のひとつ。通信等と繋がる「Connected」、自動運転などクルマの自動化に代表される「AutonomousまたはAutomated」、所有にこだわらない「Shared」、電動化を意味する「Electric」。
“Tier1.5戦略”(メガサプライヤーへの部品供給)
メガサプライヤー(例:グローバル売り上げトップ20)
- Adient plc
- アイシン
- Aptiv PLC
- BorgWarner Inc.
- Continental AG
- デンソー
- Faurecia SE (FORVIA)
- 日立Astemo
- HUAYU Automotive Systems Company Limited
- Hyundai Mobis Co., Ltd.
- Lear Corporation
- LG Energy Solution Ltd.
- Magna International Inc.
- Robert Bosch GmbH
- 住友電気工業
- thyssenkrupp AG
- トヨタ紡織
- Valeo Group
- 矢崎総業
- ZF Friedrichshafen AG
Section 4
事業別の主な戦略
B. 新事業
データセンター(DC)の市場規模と三桜の冷却商材・戦略
今後もさらに規模が拡大するデータセンター(DC)の世界市場で、サーバーの主要な冷却手法である空冷/水冷の別を問わず、「自社開発商品(オーガニック)+インオーガニックの取り組み」にて事業領域を拡大していきます。
DCの世界市場規模と推移(2030年)
国内DCのサーバーラック数と推移(2030年)
ハイパースケール型DC・リテール型DC それぞれの累積ラック数(2016年~2030年)
出所:インプレス「データセンター調査報告書2024」を基に作成
三桜の冷却商材・戦略
生産ソリューションのビジネスモデル化
これまでに培ってきた設備や装置の内製ノウハウを基盤として、自働化ニーズの高まりに伴い市場の拡大が見込まれる設備外販にも取り組み、自社グループと外部顧客双方の生産性向上に貢献しながら「生産ソリューション」の事業化を目指します。
生産ソリューションのビジネスモデル化(構想)
【サーマルx生産ソリューション】クロスドメインな冷蔵庫向けワイヤーコンデンサー事業
成長が著しいインドの冷蔵庫市場向けのワイヤーコンデンサー事業を拡大させます。かつての海外事業でもあり三桜工業が得意としてきた水冷市場において、配管製品およびその設備ニーズの双方を取り込みます。
持続的な成長が見込まれるインドの冷蔵庫市場
低普及率ゆえに高成長が見込まれる、伸びしろのある市場
三桜工業が得意とする水冷主体のインドの冷蔵庫市場
温故知新:三桜工業初の海外拠点は、いずれもワイヤーコンデンサー事業
Section 5
中期経営方針を実現させるための体制と考え方
マテリアリティの特定
自動車産業を取り巻く大きな環境変化を踏まえ、サステナブルな成長を実現するために、マテリアリティとして4つの優先項目を定めております。
| ミッションに基づく優先項目 | 貢献するSDGs | 目指す姿 |
|---|---|---|
| 革新的テクノロジーによる生産性向上 |
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人命に関わる自動車の『重要保安部品』のものづくり企業として既存事業の技術的深化を図るとともに、知の探索を通じて自社の既存技術にこだわらない新事業を創出して新たな価値を提供し、次世代自動車等の発展に貢献する。 |
| 環境負荷低減に貢献 |
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環境にやさしい材料の選定、ロスの少ないものづくり、廃棄削減を考慮した製品づくりを推進する。 |
|
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自社内での排出量のみでなく、ライフサイクルアセスメント(LCA)での削減を指標の1つとして、省エネ技術開発などを検討、推進する。 | |
| 地域社会との共創と成長 |
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三桜工業のグローバルな生産活動を通じて、各国地域の経済的発展に貢献し、地域社会とともに成長する。 各国地域人財との共創に取り組み、地域の人財と一緒に働ける環境をつくり、三桜工業のグローバル事業の持続的成長を実現する。 |
| 働きがいと生きがいの両立 |
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三桜工業のDNAを受け継ぐ「ものづくり人財」を継続的に輩出していくための「自己変革への教育・育成の場づくり」、「多様な人財の能力や個性を最大限発揮できる職場づくり」などの体制整備により、ガバナンスの基盤を構築し、個人、企業、地域の持続的成長と新たな価値創造を促す。 |
多岐の分野にわたり経験豊富な、多様性あるマネジメント
三桜工業は多様な分野で実績を積んできた人材を数多くマネジメントに受けいれ、業界の常識にとらわれない経営で、不確実な環境下においても持続的な成長を実現いたします。